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#634 ハニー ビター ハニー  加藤千恵

ハニー ビター ハニー
著 者:加藤千恵
出版社:集英社文庫
発行日:2012年04月15日
評 価:☆☆☆



ハニー ビター ハニー (集英社文庫)/加藤 千恵

¥480
Amazon.co.jp


内容(Bookデータベースより引用):
陽ちゃんは親友の沙耶香の彼氏だ。でもわたしは彼と寝ている。沙耶香のことは大切だけれど、彼に惹かれる自分を止められない―(「友だちの彼」)。ライブでボーカルの男性に一目惚れし、誘われるままホテルへ。初体験。…あたしは本当にこういうことがしたかったの?(「もどれない」)甘やかで、ほろ苦く、胸のちぎれるような切なさをたたえた全9話。人気歌人初の恋愛小説が文庫オリジナルで登場。


所感:
著者の第一次的肩書は歌人。
短歌を読んでデビューしたひとだ。
しかし今や詩、小説と幅広い分野で活躍している。

わたしは基本的に恋愛小説は苦手だ。
甘すぎたり、
中途半端に甘かったり。
苦すぎたり、
中途半端に苦かったり。
どろどろしたり、
いらいらしたり。
そういう感情をわざわざ
フィクションで追体験するのが面倒臭い。

でも不思議と著者の恋愛小説は読める。
短篇だからか。
それとも著者の感性に共鳴するところがあるのか。
不思議なくらいすんなり入ってくる。

描かれているのは特別な光景ではない。
どこにでもよくあるお話し。

本で追体験しなくても、
そこらへんに転がっている。
だけど、読み始めると引き込まれてしまう。

それはもしかしたら、
登場人物のほとんどが情けないからかもしれない。


たとえば。

「好きなひとができた」と告白する同棲中の彼氏に対して
「わたしのことは、好きじゃなくなった?」と訊くズルイ「わたし」。

彼が親友の彼になる前からずっと彼のことが好きで、
本物の彼氏じゃないから、とことん甘やかす浮気相手の「わたし」。

いつ泊まりにくるかわからないのに
朝はジャムトーストがいいという男のために
普段は食べないジャムを常備する「わたし」。

情けないのはきっと、惚れているから。
好きだから。
理性ではだめだと思っても
「好きって気持ちがあるから」と
その状況に甘えてしまっていう。
その状況がはがゆい。
もっと言うと、甘っちょろい。

でもわたしはもうそこそこいい大人なので、
その甘っちょろさを甘っちょろいなと思いながらも読めてしまう。
これがもっと若いころだったら、
読めなかっただろうな。

人生ではがゆい目に遭っているのに、
何が楽しくて本の中まで同じ思いをせにゃならんのだ!
なんとか思って。

しかも時折、ド直球のことばが登場する。
「でも、全部許せるなら、愛だよ」
この緩急が癖になる。

個人的には
ネクタイのセンスを褒めたら、
ああ、なんか水玉って人気みたいだねと興味なさげに
返事したというくだりが
記憶に残っている。

この状況だけ読んでぴんとくるはくるだろうな。
こういうの、そこらへんにごろごろ転がっている日常だもの。
その真意に気付くのは大抵、何かが起こったあとなのだけれど。




『ハニー ビター ハニー』収録作品
・友だちの彼
・恋じゃなくても
・甘く響く
・スリップ
・もどれない
・こなごな
・賞味期限
・ねじれの位置
・ドライブ日和






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#633 学園大奥  宮木あや子

学園大奥
著 者:宮木あや子
出版社:実業之日本社文庫
発行日:2012年04月15日
評 価:☆☆☆



学園大奥 (実業之日本社文庫)/宮木 あや子

¥560
Amazon.co.jp


内容(Bookデータベースより引用):
全世代の女子に捧げるハイテンション学園コメディ

女子校に憧れた和実は、猛勉強のすえ中の丸学園に合格。だが入学すると、
学園は共学になり、「大奥」と呼ばれる生徒会に牛耳られていた!
憧れの「上様」はまるで雲上人。クラスメイトは外部入学者に冷たい。
さらに、大嫌いな幼馴染み・鼻くそギルバートに愛を告白されてしまい……。
子どもから大人まで全ての女子をときめきと笑いの渦に巻き込む、学園ラブコメの決定版!


所感:
宮木氏のラブコメということで興味をもって読んでみた。
裏表紙にあるとおり、笑いの渦に巻き込まれはしたけれど、
「ラブコメ決定版」と謳うには難ありな気がする。
(帯や説明は大袈裟に書くのが付き物なんだけれど)

公立小学校での男子の「動物」さに嫌気がさし、
私立中の丸学園(女子中学校)に入学した和美。
しかし2年前に共学となった学園では、
生徒会長、生徒会監査役を務める
唯一ではなくって「唯二」の男子を頂点とする
大奥(一般的な生徒会に当たる)に牛耳られていた。
上様と呼ばれる生徒会長に恋をした和美は、
外部入学者への風当たりの強さにも負けず
中学生らしく青春を謳歌するはずなのだが…。


上様と呼ばれる憧れの先輩。
女子校にありがちないじめ。
猿にしか思えない低俗な幼なじみからの突然の告白。
母親の愛読書だった「My birthday」を駆使してのおまじない。
外部入学者という共通項が結んだ友情。

いたってふつうな
(少なくとも宮木氏やわたし世代にとっては)
女子中学生の日常がコミカルに描かれている。
ターゲットを子どもから大人までとしているからか、
文章も平易で読みやすい。

が、全7話中、6話目で何かが変わる。
その「何か」とは、雰囲気や文体ではなくて、
突然作品の中にメッセージ性が出現するのだ。

そのことに関して著者は
「あとがきという名のいいわけ」でこう述べている。
が、六話を書き始める直前に、東日本大震災が起こりました。
――こんなときに誰が小説など読めるだろう。
――しかもこんなおちゃらけたコメディなんて誰が読みたがるだろう。


そして書けなくなった、と。
しかし連載だったので書いた、と。

6話でこういう一節がある。
 現実社会では「国民のための政治」によって「新しい風」を吹かせるはずだった日本政府の政権交代が、普通に見て散々な結果、結果というか渦中というかマジでこの国終わるんじゃないのかというか、そういう感じになっている。あたしたちのような中学生にだって「このままじゃうちら将来ヤバいんじゃないか」ということが判るくらいだ。むしろ、大人よりも子どものほうが本能的にそれを感じている気がする。


東日本大震災が起こって国に失望したという著者は、
そういうメッセージを本書に込めた。
そして作品は当初の予定とは異なるものとなった。

著者は言う。
本当は、物語に著者のメッセージを組み込むことはしたくないです。そもそも私は著者の独自の倫理観や自己主張の透けて見える小説が大嫌いです。

わたしは、物語に著者のメッセージが組み込まれても良いと思う。
倫理観や自己主張を盛り込むのもアリだろう。

でも、今回の方向転換については疑問を持たずにはいられない。
メッセージを組み込む云々というのは、
作品の完成度があってこその問題ではないだろうか。

本作の場合、7話しかないのに6話目でテーマががらりと変わってしまった。
そこまで読んできた読者をおいてけぼりにして。
その点が納得いかない。

震災があって書けなくなったというのも分からなくはない。
なのに書かなければいけない――辛かっただろう。
でもそこはプロとして書いてほしかった。

会社人がプライベートで何があっても仕事をするように、
震災があっても通常業務に従事せねばならなかったように、
プロはプロとして貫いてほしかった。

著者は言った。
――こんなときに誰が小説など読めるだろう。

でもわたし思う。
こんなときだからこそ、フィクションを読みたいと。
現実はげんなりすることばかり。
現実逃避と揶揄されようが、本の世界に逃げ込みたい。
本の世界でリラックスしたい。
本の世界だからこそ笑いたい。
現実で笑うことを許されなくても、
本の世界ならば許されるから。

だからこそ、
「ラブコメ」を書き上げてほしかった。
宮木あや子ならばそれができる気がした。

でもしてくれなかった。
そしてわたしは著者に失望した。
(読み続けるけれど)

失望とは期待の裏返しなのだろう。
国に失望したひとたちは、国に期待していた。
そしてその一方でおそらく、
期待さえできなかったひともいるのではなかろうか、
とまたまたげんなりする方向に考えてしまうわたしである。




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#632 クレイジー・クレーマー  黒田研二

クレイジー・クレーマー
著 者:黒田研二
出版社:実業之日本社文庫
発行日:2012年04月15日
評 価:☆☆☆



クレイジー・クレーマー (実業之日本社文庫)/黒田 研二

¥650
Amazon.co.jp


内容(Bookデータベースより引用):
騙しのテクニックを駆使した大どんでん返しミステリ!

大型スーパー<デイリータウン>のマネージャー袖山剛史は、クレーマー・岬圭祐、
万引き常習犯「マンビー」という二人の敵と闘っていた。
激化する岬との対立関係といやがらせに限界を感じ始めた袖山の前で、ついに殺人事件が発生する……。
最終章で物語は突如変貌! あなたは伏線を見破り、真相に辿り着けるか?
奇才が放つ本格ミステリの傑作がついに文庫化! [解説・東川篤哉]


所感:
先日読んだ『鬼面村の殺人』(折原一著)の感想で、
好きだけれどお上手ではないユーモアミステリ作家として挙げた
東川篤哉氏が解説を書いている本書。

本書の著者であるくろけんも東川氏と同じく、
好きだけれどお上手ではないユーモアミステリ作家と
わたしの中ではカテゴライズされている。


大型スーパー家電コーナーマネージャーの袖山。
彼がルーティンワークの他に戦うのは、
万引き常習犯「マンピー」と
クレーマーの岬圭介。

大胆に犯行を重ねるマンピーのせいで
純利益はゼロに近づくばかり。
岬は岬で執拗ないやがらせを繰り返す。
岬の嫌がらせは袖山のプライベートにまで及び、
ついには殺人事件まで起こってしまう…。


嗚呼、くろけん(笑)。

わたしとしてはアリなのだけれど、
好き嫌いのわかれる結末だろう。
リアリティを求める読者には
けちょんけちょんにされるかもしれない。

でもいいのだ。
くろけんだもの(笑)。

くろけん作品を読んできた読者には
すぐにぴんときてしまうトリックだ。
トリックにすぐ気付いた場合、
山場での失望感のほうが多いのだけれど、
くろけん作品においては異なる。

先に気付いてしまったが故、
ショックが軽減されるのだ。
そのへんがくろけんのすごいところ(たぶん誉めている?)。

文章は相変わらずお上手ではない。
ただ、その自覚があるのかないのか定かではないが、
一文一文が短く、勢いで読めてしまう。
斜め読みしても内容がわかってしまうのだ。

クレーマー。
サービス業従事者としては胃の痛い話だ。
ノンフィクションの世界のわたしとしては
「早く警察に相談しろよ!!」と突っ込みたいところなのだけれど、
それをしちゃうとストーリーが巧く転がらないので
いたしかたない。

お上手ではないけれど、なんだか好きなくろけん。
これからもこういうゆるい感じで
ユーモアミステリの世界を生き延びていってほしい。

東川氏曰く、
バブルを引き当てた東川氏に嫉妬しているようだけれど、
たぶんバブルは長くは続かない。
地道にこつこつやっていってほしい、
とファンは願う。



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惠

Author:惠
本が好きです。
本屋さんによく出没します。
だから、本屋さんも好きです。
でも、好きな本屋さんと嫌いな本屋さんがあります。

文庫派です。
なので鮮度はそれほど重要しません。

ちなみにブックカバーは掛けません。
いろんなタイトルの本を
公共の面前で堂々と読みます。

カバーを掛けずに読書をしているひとの、
読んでる本が気になって
ついつい熱い視線を送ってしまうことがあります。


すきなもの:
本、猫、電車、お手紙、ご当地フォルムカード、灯台、岬、城、旅、謎エトセトラエトセトラ

読書の傾向

文庫中心(9割)に、新書、絵本、詩集、単行本もたまに登場します。

カテゴリとしてはミステリがほとんどです。恋愛小説はあまり読みません。

評価の基準

5段階評価で表していますが、独断と偏見に満ちた超・個人的なものです。加えて、所感も超・個人的です。

☆☆☆☆☆:
満点。ストーリー・構成・キャラクター等すべてにおいて好みの作品。何度も読み返したくなる。
☆☆☆☆:
面白い! めちゃくちゃいい!! だけど…五つ星にするにはちょっと何かが足りないかな。
☆☆☆:
面白い! 可もなく不可もなく。でも絶賛までとはいかないかな。
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好みではない。読み返すことは恐らくない。
☆:
読まなきゃよかったかも…。といっても大方の場合、苦手なモチーフやテーマが登場するのでしんどいだけ。でもたまに駄作だと思うことも。。。

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